新年明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。

 新年は、時々ご質問を頂く「ロータリーの楽器」についてのコラムからスタートいたします。

● ピストンとは音色がどう違うのか

 ユーフォニアムに比べて、ドイツ式のテノールホルンやバリトン(以下、特に断り書きがない場合、テノールホルン、バリトンは、ドイツ式の楽器を指します)は、同じ円錐管系楽器でありながら、音の立ち上がりがはっきりしていて、キレがよいです。つまりユーフォニアムよりも輪郭の明瞭な音がします。

 さらにテノールホルンはバリトンよりも管の径がやや細いので、より明るい響きになります。ただし、ユーフォニアムとブリティッシュブラスのバリトンほどの差はありません。どちらかと言いますと、ユーフォニアムが2パートに分かれた場合の高音パートをテノールホルンが担い、低音パートをバリトンが担うといった感じです。

● ロータリーの楽器は音程が悪いのではないか

 一昔前までは、「ロータリーの楽器は音程が悪い」といった悪評がありました。日本を代表する某楽器店の店員すら、そんなことを客に堂々と言っていました。しかし、これは多分に誤解があります。ドイツの奏者も日本の奏者も、上手な奏者は、どちらも音程をキープして演奏しているはずです。音程の癖はユーフォニアムにもロータリー系の楽器にもあります。

 ユーフォニアムの吹き方や音程感に慣れている方が、そのまま吹けば、違和感を感じるのは当たり前かと思います。テノールホルンやバリトンの場合、第三倍音のB♭が低め、第四倍音のFが高め、第五倍音のCが低めになる傾向があります。

 また、ロータリーヴァルヴの構造上、ホルンのように音程に幅があります。この辺が、ピストン楽器の音程のつかみ方と異なるため、勝手に「音程が悪い」と決めつけてしまいがちなのでしょう。

 何人かの方が試奏して「音程が不安」と言っていた楽器も、あるプロ奏者が吹いたら「これのどこが音程悪いの?」と言っていたこともありました。アマテュア奏者の場合は、要するに「慣れ」の部分が多いのだと思います。慣れるのは大変かというと、私の場合はそうでもありませんでした。むしろユーフォニアムとは違う響きにワクワクしながら慣れていきました。

● ロータリーはピストンより操作性が劣るのか

 これも一部でまことしやかに言われていますが、誤解です。ムノツィルブラスやジャーマンブラスの演奏を聴けば、ピストン、ロータリー関係なしに超絶技巧のパッセージを見事に演奏しているではありませんか!

 ほとんどの場合、ピストンのストロークとロータリーのストロークの差になれていないため、タイミングが合わないのです。要するに「練習不足」の部分が多いということです。もちろん楽器の状態や、経年劣化も関係しますが、それはピストンもロータリーも同じことです。

 テノールホルンやバリトンの音程や操作性に関しては、レヴェルの低いお話ですが、この手の楽器が日本ではあまり使われていないため、「もう使われなくなった古い楽器」だと勝手に思って、ユーフォニアムよりも性能が劣ると思い込んでいる方々も、残念ながらいらっしゃいます。実に嘆かわしいことです。
 
● 卵型の楽器とテューバ型の楽器とは響きが違うのか

 やはり形状が違いますので、響きも違ってきます。いずれもユーフォニアムよりも明確な輪郭の響きですが、卵型の方はホルンに近い響き、テューバ型の方はユーフォニアムに近い響きです。

 外観の馴染みと楽器の置きやすさから、テューバ型の方がやや人気があるようですが、これらの楽器の特性を存分に活かされ、ユーフォニアムとの違いがより顕著になるのは、卵型の方です。ドイツやオーストリア、チェコでも、卵型の方が一般的です。特に思い入れがない場合は、卵型の方がご満足頂けるかと思います。

● マウスピースはどれがいいのか

 まず、ほとんどのテノールホルン、バリトンは、細管と太管の間である「中細管シャンク」のマウスピースが必要です。または、細管のマウスピースを中細管にするアダプターを使うか、太管のマウスピースを削って使います。

 お勧めは Josef Klier (JK) です。テノールホルンには、9E 前後、バリトンには 6E 前後をお勧めします。いずれも、ユーフォニアムより浅めのカップで、カップ内部の形状がややV型です。ユーフォニアムで好まれる深いUカップは、これらの楽器には、響きや音程のコントロールに苦労するようです。

 他、B.ティルツ、D.ウィックなども、ドイツでは使われています。JK のマウスピース、中細シャンクにするマウスピースアダプターもお取り寄せ可能です(楽器をご注文の場合のみ)。

● どんな場面で使ったらいいのか

 日本の吹奏楽団でこれらの楽器を使いたい場合、やはり「明確な輪郭」を必要とする曲に使用すると良いかと思います。ドイツやオーストリア、チェコなどの行進曲にはもちろんしっくりきます。またネリベルやマクベス、ホルジンガー、W.シューマン、C.ウィリアムスなど、「Baritone」のパートをホルンやテューバのように用いている作品にもよく合います。

 もし一人で使用するなら、テノールホルンより管が太めのバリトンの方が、全体に馴染みやすく、扱いやすいかも知れません。もし二人以上で使用するなら、バリトン2か、片方をテノールホルンにするのも、より効果的かと思います。そして三人以上であれば、テノール1、バリトン2が良いと思います。いずれにしても、ユーフォニアムよりも明瞭なアプローチが可能かと思いますし、ブリティッシュのバリトンを加えるよりも、より効果的かと思います。

 金管アンサンブルでしたら、テノールでもバリトンでも、どちらでも良いかと思います。もしバスの役割が多ければ、バリトンの方が適しているでしょう。

 オーケストラでは、テノールテューバとして、しばしばロータリーの楽器が使われますが、大編成の曲が多いので、バリトンの方が使われる機会が多いかと思います。ただ、マーラーの「交響曲第7番」や、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」などは、管が細めのテノールホルンでよい効果を発揮しているケースもあります。

 色々な場面に活用してみたいということであれば、とりあえずはバリトンの方をお勧めします。